酒類CMの自主規制 「アニメ」「25歳以下」「ゴクゴク」はNG

 有名俳優が海の見える縁側でビールをゴクゴク飲み干す──ビール党にはたまらないそんな“定番”のテレビCMを最近見なくなった。アルコールの広告規制が静かに進んでいるからだ。
 日本酒造組合中央会ビール酒造組合など業界9団体でつくる「飲酒に関する連絡協議会」が昨年7月、広告の自主基準を強化し、〈テレビ広告で喉元を通る「ゴクゴク」等の効果音は使用しない〉〈お酒を飲むシーンについて喉元アップの描写はしない〉という規制を設けた。
 自主規制といっても、内閣府のアルコール健康障害対策関係者会議ワーキンググループの会議で「アルコール依存症の人に苦痛を与える」といった指摘がなされ、業界がその指導に従ったものだ。
 さらにこの時の規制では、酒のCM出演者の年齢も引き上げられた。かつてタレントが20歳になってアルコール飲料のCMに起用されるのはステータスだった。
「20歳になったばかりで、初めてのお酒のCMで楽しみにしています」
 2009年にサントリーのCMに初起用された堀北真希は記者会見でそう喜んだ。しかし、新基準ではそれまでの「未成年を使わない」から「25歳未満を使わない」に引き上げられた。これも「若いタレントのCMは未成年者にも飲酒への関心を高めている」との内閣府会議の指摘を受けたものだ。
 現在テレビで流れているアサヒスーパードライのCM「心がつながる春」編には花見を楽しむ若者が大勢出演しているが、「エキストラも含めて出演者は全員25歳以上です」(アサヒグループホールディングス広報部門)という。
 25歳未満の“出演自粛”はアニメCMにまで及んでいる。昨年、キリンが缶チューハイ「氷結」のアニメCMをネット配信したところ、アルコール薬物問題全国市民協会などから「ゲーム・アニメ、SNS声優アイドルなど若者文化を飲酒シーンに搦めており、登場人物は21歳の声優と25歳のイラストレーターの姉妹という設定、未成年に大いにアピールする内容」と問題視され、配信を中止した。
 ちなみに業界のCM出演者の年齢制限はノンアルコール飲料にまで及び、「未成年を広告モデルに使用しない」と決められている。こうした酒の広告規制の強化は「タバコ」の時とそっくりだ。
 タバコは2004年の財務省の指針改定でテレビ・ラジオでの銘柄CMが全面禁止されたが、ビールや缶チューハイのCMがテレビから消える日が近いかも知れない。